1月の冷たい海風。助手席に座る彼女の横顔は、最後に会った時よりも少しだけ大人びて、どこか寂しげに見えた。
「久しぶり。相変わらずだね」
照れくさそうに笑う彼女の声が、僕の記憶の蓋を一瞬でこじ開ける。一度は終わらせたはずの恋。けれど、再会を願う執着にも似た情熱が、冬の夜に二人を再び引き寄せた。
重いドアが閉まり、車内が完全な密室に変わった瞬間。
外の静寂をかき消すように、どちらからともなく手が伸びる。
唇が重なった瞬間、彼女の身体が小さく震えたのを僕は逃さなかった。
囁きは吐息に溶け、数ヶ月の空白は一瞬で熱に塗り替えられていく。
潮騒が遠くで鳴り響く中、僕たちは時の流れを完全に忘れてしまった。
かつてよりも深く、執拗に。僕は彼女のすべてを確かめるように、その柔らかな肌に牙を立て、甘い痕跡を残していく。彼女の瞳が潤み、快楽の波に呑み込まれていくたび、僕の中の「オス」が静かに吠える。
「もう、無理……おかしくなっちゃう……」
何度目かの絶頂を迎え、力なく僕にしがみつく彼女の熱量。気がつけば7時間が過ぎていた。それは、僕という男を渇望し、再び選んでくれた彼女への、僕なりの「愛し抜く」という規律だったのかもしれない。
救済としての余韻
疲れ果てて眠る彼女の髪を撫でながら、僕は思う。日常の中で押し殺してきた「女」としての叫びを、ここでなら全部吐き出していい。僕は君を否定しない。ただ、この腕の中でだけは、誰のものでもない君自身に戻ればいい。
扉を開けなければ、何も変わりません。
日常の乾きを癒やし、再び歩き出すための「温度」が欲しいのなら。
「いつか、僕にあなたの声を届けてください」
僕が呼吸を続けている「あの場所(X)」に置いてあります。
準備ができたなら、そっと扉を叩いてください。
© 2025-2026 370+の航跡 – よしき